マンション管理士の法定講習概要と費用は?受けないのはあり?

マンション管理士とは

2022年7月1日現在、日本には313の国家資格制度があります。

マンション管理のエキスパートを認証するマンション管理士の資格も、そのひとつです。

国家資格には一度取得すれば一生有効なものとそうでないものがあります。

運転免許が後者の典型で、所定の年数ごとに更新手続き(いわゆる免許の書き換え)が必要であることは皆さんもご存じでしょう。

マンション管理士も同じで、定期的に法定講習を受けて登録を更新しなければなりません。

この記事では、法定講習の概要を説明するとともに、本当にどうしても受けなければならないのか、受けないとどうなるのかについても解説します。

実は、状況次第ではあえて法定講習を受けないという選択肢もあり得るのです。

参考:総務省 国の資格制度一覧

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マンション管理士の法定講習って何?

マンション管理士になるには、まずマンション管理士試験に合格しなければなりません。

しかし、試験に合格しただけでは、まだ“マンション管理士となる資格を有する者”にすぎません。

試験合格後、国土交通大臣の登録を受けるという、もうひと手間が必要なのです。

登録されるとマンション管理士登録証が交付され、ここでようやくマンション管理士を名乗ることができます。

さらに、登録さえ完了すれば安泰というわけではありません。

運転免許と同じように、5年ごとに所定の講習を受けて登録を更新しなければならないのです。

『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』に定められた講習であることから法定講習と呼ばれ、受講を怠るとマンション管理士の登録を抹消されるおそれがあります。

なお、試験、登録、法定講習のいずれも、実際に事務を行っているのは国土交通大臣の指定・登録を受けた公益財団法人マンション管理センターです。

マンション管理士の法定講習が必要な理由

マンション管理士の法定講習が必要な理由は、一言でいえば、適正なマンション管理士業務を行っていくためには、知識のアップデートが欠かせないからです。

マンション管理を巡る社会情勢は日々変化しています。

それに応じて法令は改正され、技術の進歩も日進月歩です。

また、個人情報やプライバシーを重視する風潮が強まり、管理組合の運営には新しい考え方が求められています。

マンション管理におけるITの利活用も始まり、今後この傾向はいっそう進むものと思われます。

試験に受かってマンション管理士として登録した時点の知識だけでは、こうした変化に十分対応できません。

そこで、定期的に専門の講師による講義を受け、スキルをブラッシュアップしてもらうのが法定講習の意義です。

マンション管理士の法定講習の概要

マンション管理士の法定講習の概要を紹介します。

法定講習の内容

法定講習の内容は下表のとおりです。

科目内容時間
マンションの管理に関する法令及び実務に関する科目 (マンション管理適正化法に関する科目を除く)・区分所有法その他マンションの管理に関する法令の概要及び最近の改正内容等の解説 ・マンション標準管理規約及びマンション標準管理委託解約書の概要及び最近の改正内容等の解説 ・マンションの管理に関する実務の概要及び最近の実務動向の解説約120分
管理組合の運営の円滑化に関する科目・管理組合の運営の円滑化のための方策及び最近の紛争事例等の解説約90分
マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関する科目・マンションの建物及び付属施設の構造及び設備の概要 ・長期修繕計画の作成方法及び大規模修繕の実施方法の概要及び最近の実務動向の解説約120分
マンション管理適正化法に関する科目・マンションの管理の適正化の推進にかかる法律の章及び節ごとの概要並びに最近の改正内容等の解説約30分

大きくは4科目に分かれ、トータルで360分(6時間)かかります。

法定講習の目的に沿った実戦的なカリキュラムが組まれています。

なお、講義終了後の試験やレポートの提出義務はありません。

法定講習を修了すると修了証が交付され、自動的に登録が更新されます。

法定講習の開催場所

会場は全国の主要都市に設置され、例年毎年1~2月に開講されます。

1日ですべての科目を受講します。

2021年度から、新型コロナウイルス対応のためWebでも受講できるようになりました。Web講習もほぼ同じ時期に行われ、各科目を何回かに分けて受講することが可能です。

いずれも2023年度の日程・場所は未定です。

詳細はマンション管理センターのホームページで確認してください。

法定講習の受講タイミング

法定講習を受けるタイミングは、登録から5年後の応当日が属する年度末までとされています。

ここで応当日というのは、登録を受けたその月日の意味です。

たとえば登録日が2018年(平成30年)12月15日であれば5年後の応当日は2023年(令和5年)12月15日になり、この日が属する2023年度末(2024年3月31日)までに法定講習を受講しなければなりません。

法定講習の費用

受講料は16,600円(税込み)です(2022年度の場合)。

ほかに、受講料の振込手数料や会場までの交通費などがかかります。

法定講習を受けないとどうなるか?

法定講習の受講はマンション管理士の義務ですから、違反するとペナルティを受けます。

具体的には、マンション管理士の登録を取り消されたり、期間を定めてマンション管理士の名称の使用を停止されたりすることがあります。

また、一度登録を取り消されると、2年を経過するまで再登録ができません。

マンション管理士は名称独占資格(資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が禁止されている資格)のため、たとえ試験に合格していても登録されていなければマンション管理士を名乗れなくなります。

自営のマンション管理士はもちろん、管理会社等に所属するマンション管理士にとっても、非常に手痛い処分といってよいでしょう。

ただし、法定講習を受けなかったために登録を取り消されたとしても、マンション管理士試験に合格した効力まで失われるわけではありません。

つまり、試験を受け直す必要はなく、最悪でも2年たてば再登録できるということです。

費用はかかるものの、(再)登録手続き自体は簡単で、合格から登録までの期間にも制限はありません。

登録取り消しは厳しい措置ですが、まだ取り返しはつくと考えてよいでしょう

でも、実は法定講習を受けない選択もあり

実務上、登録から5年がたつとマンション管理センターから法定講習の案内が来ることになっています。

本人や会社も注意しているでしょうから、現役のマンション管理士がうっかり法定講習を受け忘れたというケースは現実にはほとんどないものと思われます。

一方、マンション管理士試験に合格しながら登録を受けていない人も一定数存在します。

数多くの国家試験に合格すること自体が目的の資格マニアといわれる人や、将来の転職に備えて試験に合格したけれど当面マンション管理士として活動するつもりがない人などです。

そもそも登録されていないのですから、法定講習を受講する義務も権利もないことはいうまでもないでしょう。

では、マンション管理士として管理会社に勤務していたけれど、退職して別の業種に転職したという人はどうでしょう。

それでも法定講習を受けるかどうかは、将来の見通しや個人の価値観によって決めるしかありません。

思案のしどころですが、決して安くはない費用や手間を考えれば、あえて見送って登録からはずれるという選択肢も大いにあり得ます。

この場合、もしまたマンション管理士として働くことになったら、あらためて登録手続きを受けることになります。

要するに、置かれた状況によっては、法定講習を受けないことも十分考えられるということです。

まとめ

まずは、試験合格とマンション管理士登録が別物であることを再確認しましょう。

そのうえで、各自の立場に応じて法定講習を受講するかどうかを判断してください。

マンション管理士として活動するため登録を更新したいのなら必ず法定講習を受けるべきですし、そうでなければこの記事で解説した内容を参考にして考えればよいのです。


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