マンション管理士は、マンション管理のプロとして管理組合の円滑・適正な運用などに貢献する国家資格です。
資格を得るためには、まず合格率10%前後の難関である国家試験を突破しなければなりません。
しかし、試験に合格するだけでは不十分で、さらに国土交通大臣の登録を受ける必要があるのです。
登録は事務的な申請手続きですが、費用に加え、いくつかの書類を揃える手間がかかります。
この記事では、登録制度の概要や具体的な方法を解説するとともに、登録しないとどうなるのかについても説明します。
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マンション管理士になるには登録が必要
数ある国家資格の中には、試験に合格したあと登録などの手続きを踏まなければ正式に資格が与えられないものがあります。
いわゆる士業関係の資格では珍しくなく、マンション管理士もそのひとつです。
マンション管理士試験に試験に合格しただけでは、まだ“マンション管理士となる資格を有する”状態にすぎません。
国土交通大臣に登録を申請しマンション管理士登録簿に登載された時点で、初めてマンション管理士を名乗れるのです。
マンション管理士の根拠法令である『マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)』でも、試験と登録は別の節で規定されています。
なお、マンション管理士は名称独占資格であり、資格を持っていない者がマンション管理士の名称を使用してはなりません。
マンション管理に関してどんなに豊富な知識を持っていても、試験に合格していない人はもちろん、合格しても未登録の間は、ただの“詳しい人”でしかないのです。
マンション管理士登録の方法
登録自体は単なる事務手続きで、特に難しい点はありません。
ただし、形式的な書類審査は行われ、記入もれや添付書類の不備があれば補正を求められます。
ひとつ注意しておきたいのが欠格事由です。
これは、マンション管理士として登録できない事由(いわゆる前科や心身の故障など)を法律で定めたもので、いずれかに該当すると登録を受けられません。
とはいえ、国土交通省の職員が根掘り葉掘り調べるわけではなく、実務上は欠格事由に該当しないことを自ら誓約するという形で処理されています。
したがって、本当は欠格事由に該当する人がうそをついて登録することも不可能ではありませんが、ばれたら登録抹消は避けられないでしょう。
登録手続きの流れ
マンション管理士は国土交通大臣が所管する国家資格ですが、実際の試験や登録処理は国土交通大臣の指定を受けた公益財団法人マンション管理センターが行っています。
したがって、実際にはマンション管理センターとの間で書類をやり取りすることになります。
なお、2022年度現在、オンライン申請は導入されていません。
登録申請書と誓約書の記入
マンション管理士試験に合格すると、マンション管理センターから合格証が送られてきます。
申請者が作成するのは登録申請書と欠格事由非該当の誓約書ですが、どちらも合格証に同封されているのでわざわざ取り寄せる必要はありません。
書類の書き方や登録手続きの詳細について記載した冊子と返信用封筒も同封されているはずです。
氏名や住所はあらかじめ印字されているので、実際に記入するのは本籍、申請日と署名だけです。
ただし、住所は住民票の表示と一字一句同じでなければなりません。
印字されている住所が住民票の表示と一致していなければ、二本線で抹消して訂正します。
訂正印は要りません。
このほか特に難しいところはないと思いますが、心配ならばコピーを取って下書きしてみるのもよいでしょう。
なお、令和3年から書類への押印は不要になりました。
昨今の印鑑レス化の流れに沿うものですが、代わりに署名が求められています。
署名というのは自筆で記入することですから、パソコンで印字したり他人に代筆してもらったりしてはいけません。
書類を紛失したりひどく汚したりしてしまったら、マンション管理センターに連絡して再送付してもらいます。
特に罰則などはありませんが、担当者の手間を増やすことになるため書類の管理には注意しましょう。
住民票の写しを用意
申請者が実在していることを確認するため、住民票の写しを添付することになっています。
居住地の市区役所や町村役場で住民票の写しを交付してもらいます。
必ず、個人番号(マイナンバー)が記載されておらず、なおかつ本籍が表示されたものを用意してください。
マイナンバーカードを持っていればコンビニで住民票の写しが取れるようになりましたが、これを利用しても差し支えありません。
コンビニで交付される住民票の写しにはマイナンバーが記載されず、本籍を表示するかどうかは自分で選択できます。
ちなみに、以前は法務局で「登記されていないことの証明書」、本籍地で「身分証明書」を発行してもらい、添付することになっていました。
これらは禁治産者や成年被後見人でないことを証明する公的書類なのですが、住民票に比べると交付に格段の手間がかかっていました。
令和元年度の法改正にともなって添付が不要となり、かなり負担が軽減されています。
費用の支払い
郵便振替で登録手数料を支払い、領収書を受け取ります。
こちらもオンライン納付には対応していないので、郵便局に出向かなければなりません。
郵便局へ行ったついでに、登録免許税の収入印紙も購入しておきましょう。
登録申請書の所定の欄に収入印紙と登録手数料の領収書を貼り付けたら完成です(収入印紙に消印を押してはいけません)。
書類の郵送
最後にもう一度チェックしたら、書類一式を返信用封筒に入れてマンション管理センターあて郵送します。
重要な書類なので、普通郵便ではなく特定記録郵便で送ることになっています。
郵送料は自己負担です。
マンション管理士登録証の発行
書類に不備がなければ、マンション管理士登録簿に氏名や生年月日などが登載されます。
申請は毎月末日で締め切り、翌月第3金曜日(原則)に登載されてその週明けに登録証が発送されることになっています。
マンション管理士登録証が送られてきたら手続きは完了です。
なお、マンション管理士登録証は表彰状サイズの文書です。
額縁に入れて事務所に掲示しておくようなもので、携帯には不便です。
このため、希望すればカード型のマンション管理士証も発行してもらえますが、別途料金がかかります。
登録に必要な費用
登録免許税は9,000円で、収入印紙により納付します。
高額の収入印紙はコンビニでは扱っていないので、郵便局で入手するのが確実です。
これは税金の一種ですから、国庫に入ります。
一方、手数料はマンション管理センターの収入になります。
郵便振替で支払い、金額は4,250円(非課税)です。
住民票交付手数料は自治体によって異なりますが、300円のところが多いようです。
コンビニで発行すると手数料が安くなることが多く、役所の窓口に並ぶ手間も省けます。
マイナンバーカードを取得している人は積極的に利用しましょう。
前述したように、書類は特定記録郵便で返送します。
料金は、普通郵便料金+160円です。
以上が最低限必要な費用で、合計すると14,000円ほどになります。
そのほか細かいことをいえば、郵便局や市役所などに出向く際の交通費がかかります。
さらに、カード型のマンション管理士証を発行してもらうためには、手数料2,540円が必要です。
郵便局に備え付けてある払込取扱票で納付しますが、その払込にも手数料がかかります。
会社から登録費用の補助が受けられることも
マンション管理会社の社員であれば、会社が諸経費を補助してくれることもあります。
マンション管理士を多く抱えているのは、会社の営業戦略上好ましいことです。
つまり、社員がマンション管理士の資格を持っていることは会社にもメリットがあり、資格取得を奨励するため費用を負担してくれるというわけです。
登録後、5年ごとに法定講習を受講して登録を更新
登録は基本的に一度だけの手続きですが、登録後5年ごとに法定講習を受ける義務があります。
法定講習を怠ると登録を取り消されるおそれがありますが、試験に合格した効力までは失われないので、所定の年数が経過すれば再登録は可能です。
また、転職や廃業などの理由で自ら登録を抹消することもできます。
この場合も再登録は可能です。
登録しないとどうなる?
マンション管理士試験に合格したからといって、必ず登録しなければいけないわけではありません。
つまり、権利はあっても義務はないのです。
実際、合格しても登録しない人は相当数(合格者の3割程度)存在します。
たとえば、マンション管理や不動産関連の仕事に就いている人が勉強や自己研鑽のため受験したものの、資格取得までは望まないというケースです。
あるいは、今はマンション管理とは関係のない会社に勤めているけれど将来の転職に備えて試験を受けた人なども、さしあたり登録を見合わせる可能性があります。
また、国家資格を取ること自体が目的の資格マニアと呼ばれる人たちもいます。
登録証までほしいのであればもちろん登録が必要ですが、試験の合格証だけで満足するのなら登録は不要です。
いずれにせよ、すぐに登録しなくても試験合格の効力は一生続き、その気になったらいつでも登録できます。
登録申請書を紛失してしまったという場合は、マンション管理センターに連絡すれば用紙を送ってもらえます。
試験を受けた目的や今後の進路など、各自の事情に応じて判断すればよいということです。
意外な将来のリスク
極論すれば、試験に合格さえしておけばあとはなんとでもなるのですが、もうひとつ考慮しておくべきリスクがあります。
実は、登録に期限がないことに関しては、これを疑問視する意見があるのです。
前述のとおり、登録を受けて毎日マンション管理業務にいそしんでいる人は5年ごとに講習を受講しなければなりません。
これに対し、たとえば合格してから10年間実務を経験していなかった人がいきなり申請しても簡単に登録できてしまうのはいかがなものか…ということです。
実際、試験合格後、登録のために実務研修が課される国家資格もあります。
将来的にマンション管理士制度が変わり、登録のハードルが上がることも考えられるのです。
こうしたリスクを避けるため、今のうちに登録しておくというのもひとつの考え方でしょう。
まとめ
多少の手間と費用はかかりますが、マンション管理士の登録はさほど難しい手続きではありません。
マンション管理士としてキャリアを積むつもりなら、登録は必須です。
管理会社で実務に携わっている社員などがこれに該当し、登録しなければ意味がないといってもいいでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、合格=登録ではありません。
合格者それぞれの事情や費用負担などを考慮して、あえて登録しないという選択肢もあり得ます。
この記事で説明したことを参考に、最善の判断をなさってください。
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